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ステンレス鋼溶接部のフェライト含有量測定 Application Notes - Ferrite Meter

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ステンレス鋼溶接部のフェライト含有量測定

ステンレス鋼溶接部のフェライト含有量測定

石油化学工場やエネルギープラントなどで稼働するボイラーやパイプラインは、高温や高圧、腐食性の化学物質に日々さらされており、特に劣化や腐食による破壊が起きやすい溶接部では、強度と耐久性が求められています。

それら設備に使用されるオーステナイト鋼および二相ステンレス鋼において、溶接部のフェライト含有量は、耐食性や靭性に影響を与える重要な管理項目です。規格や仕様でフェライト量を規定し、現場で測定することで品質を管理しています。

ここでは、フェライトメーターを用いたフェライト含有量測定について説明します。

オーステナイト鋼と二相ステンレス鋼の特徴

フェライトメーターは、オーステナイト鋼、または二相ステンレス鋼の溶接部に含まれるデルタ・フェライト量を測定するために使用します。下の表は、オーステナイト鋼と二相ステンレス鋼の特徴と代表鋼種です。

種類 説明 代表鋼種
オーステナイト鋼
(オーステナイト系ステンレス鋼)
クロムとニッケルを主成分とし、耐食性に優れたオーステナイトという金属組織を常温で形成するステンレス鋼です。基本的にオーステナイト単相でフェライトを全く含みませんが、オーステナイト鋼に用いられる溶接金属は、溶接時の高温割れを防止するためフェライトを含有しています。
その優れた耐食性や靭性を活かして、食器などの家庭用品から自動車部品、建築資材まで幅広く利用されており、ステンレス鋼生産量の約6割を占めます。
SUS304
SUS316
二相ステンレス鋼
(オーステナイト・フェライト系ステンレス鋼)
オーステナイト系ステンレスとフェライト系ステンレスを1対1の割合で混合したステンレス鋼です。それぞれの金属組織の長所を掛け合わせることで、優れた物理的性質を実現しています。オーステナイト鋼と比べて高い強度と同等以上の耐食性を誇り、オーステナイト鋼の弱点である孔食や応力腐食割れへの耐性を持ちます。
水門、下水道設備、各種の海水機器や化学プラント用装置など、負荷の高い環境で使用される設備に利用されていますが、高温用途には適さないという弱点もあります。
SUS329J1

測定方法

上述の通り、オーステナイト鋼はフェライトを全く含んでいませんが、溶接金属は高温割れ防止のためフェライトを含有しています。
フェライトメーター『TQ-7』を用いてオーステナイト鋼のパイプ試験体を測定し、素地部(母材)がフェライトを含んでいないことと、溶接部に適度なフェライトが含まれていることを確認します。

  • まず、調整用試験片を用いてフェライトメーターの調整を行います。

    次に、素地部を測定します。プローブを素地に当て保持します。オーステナイト鋼はフェライトを全く含まないため、表示値が0.0%のまま反応しないことを確認します。

    続けて溶接部を測定します。プローブを当てるとフェライト含有量が表示されます。今回のケースでは、4.9%と表示されました。オーステナイト鋼溶接部のフェライト含有量の目安は0.5~12%のため、適切なことが分かります。

    *フェライト含有量の合否判定については、規格や仕様書など検査基準と照らし合わせて判断してください。

  • 測定方法
測定方法
測定方法
種類 フェライト含有量(目安)
オーステナイト鋼溶接部 0.5%~12%
二相ステンレス鋼溶接部 30%~60%

測定時の注意事項

フェライトメーターはフェライト含有量を簡単に測定できますが、一方で試験体の形状の影響を受けやすく注意が必要です。
測定面の曲率が大きかったり、溶接ビードのように凹凸がある場合は、測定箇所や測定回数を増やして平均値を取ることで、信頼性を上げることができます。また、測定前の調整において、試験体同等の条件(材料、厚さ、曲率、表面粗さ、温度)を持つ調整用試験片を用いることで、測定精度を高めることもできます。

測定精度に影響する要因はこちら

『TQ-7』は連続測定モードを搭載しており、プローブを当てている間、常時測定することができます。これにより、プローブを垂直に当てることが難しい曲面において、再現性を高めることができます。また、溶接ビードを平滑に研磨した試験体においては、連続測定モードを使用することで、素早く溶接部を見つけることができます。
ただし、プローブ先端の測定子は摩擦に弱く、プローブをスキャン走査(当てた状態で横に滑らせる)すると損傷するおそれがあり、注意が必要です。スキャン走査をする際は、先端をテフロンテープ等で保護することを推奨します。