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磁気誘導法の測定原理 Measuring Principle - Ferrite Meter

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磁気誘導法の測定原理

測定原理

ここでは、フェライトメーターの測定原理である磁気誘導法について、詳しく説明します。

磁気誘導法では、フェライト相が磁性を持つことを利用して、非磁性組織(オーステナイト相、炭化物、シグマ相、介在物)内のフェライト含有量を測定します。正確には、原理上すべての磁性成分が検出されるため、デルタ・フェライトだけでなく、他のフェライト成分や変態マルテンサイトなども測定できます。

プローブは、鉄心と2つのコイル(励磁コイル、検出コイル)で構成されます。

励磁コイルに低周波の交流電流が流れると、鉄心の周りに磁束が発生します。プローブを近づけて磁束が試験体に達すると、試験体中のフェライト成分との相互作用で磁束が変化し、この変化によって検出コイルには起電力が生じます。このとき、磁束の変化量はフェライト含有量に比例するため、検出コイルに生じる起電力の大きさも、同様にフェライト含有量に比例することとなります。

この原理により、起電力を測定することでフェライト含有量を測定することができます。

測定精度に影響する要因

フェライトメーターは、プローブを試験箇所に当てるだけで簡単に測定できることが大きな特長ですが、一方で取扱いに注意が必要な面もあります。磁気誘導法の測定原理上、主に試験体の形状や測定面の条件に関するいくつかの要因によって、測定精度が低下する場合があります。

測定深さ範囲の制約

標準的なプローブの場合、励磁コイルによる磁束が試験体内部に広がる範囲は、深さ・左右方向それぞれプローブ先端から3mm程度です。従って、測定対象範囲は表面層の一部分で、試験体全体のフェライト分布や、厚み全体のフェライト量を一度に測定することはできません。このため、同一の試験体を用いても、金属組織学的な評価と大きく異なる結果になる場合があります。

測定面の曲率

測定面が平坦の場合と曲面の場合で、励磁コイルによる磁束が試験体内部に広がる範囲(体積)は変わります。凹面では平坦面より影響範囲が広くなり、凸面では狭くなります。この変化に比例して、磁束範囲に含まれるフェライト量も変わります。このため、例えば平らな試験片で予め測定器を校正した場合、凹面では測定値が高くなり、凸面では低くなります。測定面の曲率によっては、実際のフェライト含有量の数倍もの測定誤差が生じる可能性もあります。

測定箇所の薄さ・狭さ

測定箇所が薄い場合や、エッジ部など測定面が狭い場合も、励磁コイルによる磁束範囲の影響が生じます。例えば、磁束が測定対象の試験体を越えて、隣接する他の材料に達したり、部分的に空気中を流れるため、測定精度が低下することがあります。一般的に、試験体の厚さが2mm以下の場合に影響が生じ、薄いほど測定誤差は大きくなります。

測定面の粗さ

測定面が粗い場合、プローブ先端の測定子が凸部に当たるか凹部に当たるかで、励磁コイルによる磁束の影響範囲が変わり、測定精度が低下することがあります。一般的に、表面粗さの影響は試験体のフェライト含有量に大きく依存し、フェライト量が10%未満(約10FN未満)の場合、その影響は小さいと考えられます。フェライト量の増加に伴って影響は大きくなりますが、測定箇所や測定回数を増やして平均値を取ることで、信頼性を確保することができます。

以上より、磁気誘導法は、ある程度厚みのある試験体の表面層に含まれるフェライト量の測定に適しており、測定箇所が平坦・平滑であるほど、正確に測定することができます。このような特性を考慮することで、適切な測定方法を選択するとともに、フェライトメーターを用いた検査の信頼性を、より高めることができます。