フェライト含有量の測定方法 Measuring Principle - Ferrite Meter
フェライト含有量の測定方法
測定方法の種類
フェライトメーターは、電磁気的な方法でフェライト含有量を測定する装置ですが、フェライト量の測定方法や測定器にはその他にもいくつかの種類があり、『磁気的な機器による測定』『組織図による推定』『顕微鏡による組織観察』に大きく分類されます。
磁気的な機器による測定
フェライトが磁性を持つことを利用した測定器で、「フェライトインジケーター」「マグネゲージ」、そして「フェライトメーター」の3種類に分けられます。前者の2つが磁気的な吸引力を測定するのに対し、フェライトメーターは磁気誘導という原理によって電磁気的に測定を行います。
組織図による推定
「シェフラーの組織図」「ディロングの組織図」「WRC1992の組織図」の3種類がありますが、いずれも母材や溶接金属の組成からオーステナイト生成元素(C、Mn、Ni、N)の指数をNi当量、またフェライト生成元素(Cr、Mo、Si、Nb)の指数をCr当量として算出し、各組織図に当てはめてフェライト含有量を推定します。
顕微鏡による組織観察
研磨、エッチングした試験体のミクロ組織を顕微鏡で観察し、組織全体に対するフェライトの占積率からフェライト含有量を算出します。
これらの測定方法は、それぞれ原理や精度、測定対象範囲が異なるため、同一の試験体を用いても、異なる結果になる場合があります。試験体や目的に応じて、最適な方法を選択することが重要です。
なお、フェライト含有量を表す単位には、%(フェライトパーセント)とFN(フェライトナンバー)の2種類があります。%は金属組織中のフェライト量を百分率で表したもので、FNは試験体と標準永久磁石間の吸引力に基づいてフェライト量を規定したものです。それぞれ定義が異なるため、%とFNは一致しない場合があります。
フェライトメーターの測定原理である磁気誘導法の特長として、フェライト量の高い溶接金属や不適切な温度条件での溶接工程によって生成されるシグマ相(Fe-Crの金属間化合物)を、非フェライト成分(非磁性)として正しく区別することができます。一方、顕微鏡観察のような金属組織学的な手法ではシグマ相の区別が難しく、フェライト含有量を正しく評価できないおそれがあります。
また、フェライトメーターは一般的に小型・軽量で持ち運びやすく、プローブを試験箇所に当てるだけで測定できるため、特に現場での検査に最適な測定方法です。
測定方法 | 使用ツール | 説明 |
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磁気的な機器による測定 | フェライトメーター | 試験体のフェライト含有量によって磁気誘導が変化することを利用。プローブ内の励磁コイルによる磁束がフェライト量に対応して変化し、検出コイルに起電力を誘起する。この起電力を測定することでフェライト含有量を測定。 |
フェライトインジケーター | フェライト含有量が既知の標準試料(インサート)と、測定する試験体との間で、機器内の磁石に対する吸引力を綱引きの原理で対比することにより、試験体のフェライト含有量を範囲として測定。 | |
マグネゲージ | 磁石と試験体間の吸引力がフェライト含有量に対応する原理を利用。付属の永久磁石と試験体間の吸着が、ばねによって引き離されるときの力を測定し、換算表を用いてフェライト含有量を求める。 | |
組織図による推定 | シェフラーの組織図 ディロングの組織図 WRC1992の組織図 |
母材や溶接金属の化学成分からフェライト含有量を推定する方法。各組織図に記載の計算式より、オーステナイト生成元素(C、Mn、Ni、N)の量からNi当量を、フェライト生成元素(Cr、Mo、Si、Nb)の量からCr当量を算出し、組織図に当てはめてフェライト含有量を読み取る。 |
顕微鏡による組織観察 | 光学顕微鏡 電子顕微鏡 デジタルマイクロスコープ |
試験体を研磨、エッチングしてフェライト、オーステナイトといった金属組織を可視化し、顕微鏡で観察。組織全体に対するフェライト領域の占積率からフェライト含有量を算出。 |