平板突合せ継手溶接部の超音波探傷 Application Notes - Ultrasonic Flaw Detection
平板突合せ継手溶接部の超音波探傷
溶接は、金属を溶かして接合部を一体化する方法の1つで、自動車、船舶、建設機械、建築物など、あらゆる金属構造物で使用されています。
溶接の品質は、溶接条件や溶接工の技量により大きく左右され、不適切な溶接は重大な事故につながる可能性もあります。このため、溶接部の品質確認は非常に重要で、超音波探傷器はこの品質確認のために広く使用されています。
ここでは、鋼の平板突合せ継手溶接部の超音波探傷について説明します。
※詳細は、JIS Z 3060(鋼溶接部の超音波探傷試験方法)をご参照ください。
測定方法
溶接部の探傷では通常、斜角の一振動子探触子を使用します。垂直探触子では、余盛のため探触子を密着させることが困難であることと、板厚方向の割れを検出することができないからです。
JIS Z 3060では、斜角探触子の公称周波数、振動子の公称寸法および屈折角を以下のように定めています。
斜角探触子に通常使用する公称周波数
使用する最大のビーム路程 | 公称周波数 |
---|---|
100mm以下 | 3.5~5MHz |
100mmを超え 150mm以下 | 2~5MHz |
150mmを超え 250mm以下 | 2~3.5MHz |
250mmを超える場合 | 2MHz |
斜角探触子に通常使用する振動子の公称寸法
公称周波数 | 振動子の公称寸法 |
---|---|
2~2.5MHz | 14×14、20×20 |
3~4MHz | 10×10、14×14、20×20 |
4.5~5MHz | 5×5、10×10 |
STB音速比による屈折角の選定
試験体の板厚 | STB音速比 | 探傷に適用する屈折角 |
---|---|---|
6mm以上、25mm以下 | 0.990未満 | 探傷屈折角63°以上72°以下 |
0.990以上、1.020以下 | STB屈折角63°以上72°以下 | |
1.020を超える | 探傷屈折角63°以上72°以下 | |
25mmを超え、75mm以下 | 0.995未満 | 探傷屈折角58°以上72°以下 |
0.995以上、1.015以下 | STB屈折角58°以上72°以下 | |
1.015を超え、1.025以下 | STB屈折角58°以上67°以下 | |
1.025を超える | 探傷屈折角58°以上72°以下 | |
75mmを超える | 0.995未満 | 探傷屈折角58°以上67°以下 |
0.995以上、1.025以下 | STB折角58°以上67°以下 | |
1.025を超える | 探傷屈折角58°以上67°以下 |
探傷器の調整
STB-A1試験片またはA3系試験片を使用して、入射点の測定、測定範囲の調整、屈折角の測定を行います。
入射点、STB屈折角、測定範囲および探傷感度は、作業開始時だけでなく、作業開始後4時間以内毎と作業終了時に点検し、これら条件の変化量を確認する必要があります。
装置の調整項目 | 使用する試験片等 |
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入射点の測定(0.5mm単位) | STB-A1、STB-A3、STB-A31、STB-A32 |
測定範囲の調整 | |
STB屈折角の測定(0.1°単位) | |
探傷屈折角の測定(0.1°単位) | STB音速比、V透過法または、対比試験片による方法 |
エコー高さ区分線の作成と領域区分
同じ大きさのきずでも、探触子からの距離(ビーム路程)が近いとエコーの高さは高くなり、遠くなると低くなります。探触子からきずまでの距離(ビーム路程)が異なっても、同じ大きさのきずを同じように評価する必要があり、このためにエコー高さ区分線を作成します。
STB-A2系試験片もしくはRB-41を使用し、6dBずつゲインを変えた3本のエコー高さ区分線を作成し、上からH線、M線、L線とします。
(L線は、きずエコーの評価に用いられるビーム路程の範囲で、その高さが10%以上ある必要があります。)
エコー高さの領域区分は、L線より下はI、L線とM線の間をⅡ、M線とH線の間をⅢ、H線より上をⅣとします。
装置の調整項目 | 使用する試験片 |
---|---|
エコー高さ区分線の作成 | STB-A2、STB-A21、RB-41A、RB-41B |
探傷感度の調整
STB-A2系試験片やA3系試験片、RB-41を用い、標準穴のエコー高さがH線に一致するように探傷感度を調整します。
装置の調整項目 | 使用する試験片 |
---|---|
探傷感度の調整 | STB-A2、STB-A21、STB-A3、STB-A31、STB-A32、RB-41A、RB-41B |
探傷
きずの傾きによる見落としを防ぐため、使用するビーム路程が250mm以下の場合は、超音波を溶接部に直接当てる直射法と、超音波を底面に当て反射した超音波で溶接部を狙う1回反射法を組み合わせ、かつ余盛の両側から探傷します(片面両側)。
板厚が厚く、ビーム路程が250mmを超える場合は、表面側だけでなく、底面側を含めた両側から探傷します(両面両側)。
検出レベルは、M線を超えるきずを対象とするM検出レベルと、L線を超えるきずを対象とするL検出レベルのいずれかを、当事者間の話し合いで決めます。
定められた範囲を探触子走査し、M検出レベルの場合は最大エコー高さがM線を超えるきずを、L検出レベルの場合は最大エコー高さがL線を超えるきずを評価対象とします。評価対象のきずエコーを検出したら、その時の探触子位置、ビーム路程、エコー高さの領域区分等を記録します。
次に、きずの指示長さを測定します。きずの指示長さとは、溶接線に平行な方向の長さです。きずの最大エコー高さを検出した位置から、左右走査(溶接線に平行に探触子を走査)を行い、エコー高さがL線を超える範囲がきず指示長さとなります。