鋳鉄品の超音波探傷 Application Notes - Ultrasonic Flaw Detection
鋳鉄品の超音波探傷
鋳鉄は、ねずみ鋳鉄(FC)、CV黒鉛鋳鉄(FCV)、球状黒鉛鋳鉄(FCD)の3種類に大別され、自動車をはじめ様々な製品・部品に用途に応じて使用されています。
鋳鉄品の超音波探傷試験は、堰や押し湯付近、肉厚部等の最終凝固部の引け巣が発生しやすい箇所で実施されています。鋳鉄品は形状が複雑で、表面も鋳肌のため平滑でなく、さらに超音波の減衰も大きいため、一般的な鋼材の超音波探傷に比べると難しく、慎重に実施する必要があります。
測定方法
下のイラストは、健全な鋳鉄品と、きずのある鋳鉄品の超音波探傷のイメージ図です。
健全な鋳鉄品では、送信パルスと底面エコーの間にエコーが表示されませんが、きず(引け巣)がある鋳鉄品の測定では、きずからのエコーが表示されます。このきずエコーから、きずの有無を判断します。
対比試験片
検査に当たり、まず検出したいきずの位置および大きさを決めます。次に、その位置に人工きず(ドリルの平底穴や横穴)を施した対比試験片を製作します。対比試験片は、試験条件を決めるために大切な試験片です。
探触子(プローブ、トランスデューサー)
一般的に2~5MHzの周波数の探触子を使用し検査を行います。
厚物の測定では、低周波で径が大きい探触子を使用し、薄物や表面近くにあるきずの探傷ではニ振動子探触子を使用します。探傷面が粗い場合は、保護膜付きの探触子や粘性のある接触媒質を使用します。
探傷
超音波探傷器で、ゼロ点および音速、測定範囲を調整します。次に、製作した対比試験片の人工きずからの最大エコー高さが、80%になるように感度を調整します。これが試験感度となります。
きずを見逃さないように、探傷感度に6dBまたは12bB足し、粗探傷を行います。きずを検出した場合、鋳鉄品の該当箇所に印をつけ、探傷感度を試験感度に戻し、再度その傷を探傷します。最大エコー高さが80%を超えた場合、きずの大きさは人工きずよりも大きいものと判断することができます。