資料ダウンロード
資料DL

円周継手溶接部の超音波探傷 Application Notes - Ultrasonic Flaw Detection

  1. HOME
  2. 製品情報
  3. 超音波探傷器
  4. 円周継手溶接部の超音波探傷

円周継手溶接部の超音波探傷

円周継手溶接部の超音波探傷

溶接は、金属を溶かして接合部を一体化する方法の1つで、自動車、船舶、建設機械、建築物など、あらゆる金属構造物で使用されています。
溶接の品質は、溶接条件や溶接工の技量により大きく左右され、不適切な溶接は重大な事故につながる可能性もあります。このため、溶接部の品質確認は非常に重要で、超音波探傷器はこの品質確認のために広く使用されています。

ここでは、探傷面の曲率半径が50mm以上1,000mm未満の鋼の円周継手溶接部の超音波探傷について説明します。

※詳細は、JIS Z 3060(鋼溶接部の超音波探傷試験方法)をご参照ください。

測定方法

鋼の円周継手溶接部の超音波探傷では、平板突合せ継手溶接部の探傷と同様に、斜角探触子を使用します。
JIS Z 3060では、使用する斜角探触子の公称周波数、屈折角および振動子の公称寸法を以下のように定めています。

垂直探触子に通常使用する公称周波数

使用する最大のビーム路程 公称周波数
100mm以下 3.5~5MHz
100mmを超え 150mm以下 2~5MHz
150mmを超え 250mm以下 2~3.5MHz
250mmを超える場合 2MHz

使用する斜角探触子の振動子の公称寸法

振動子の公称寸法
10×10 以上 20×20 以下

使用する斜角探触子の公称屈折角

試験体の板厚 STB音速比 探傷に適用する屈折角
6mm以上、25mm以下 0.990未満 探傷屈折角63°以上72°以下
0.990以上、1.020以下 STB屈折角63°以上72°以下
1.020を超える 探傷屈折角63°以上72°以下
25mmを超え、75mm以下 0.995未満 探傷屈折角58°以上72°以下
0.995以上、1.015以下 STB屈折角58°以上72°以下
1.015を超え、1.025以下 STB屈折角58°以上67°以下
1.025を超える 探傷屈折角58°以上72°以下
75mmを超える 0.995未満 探傷屈折角58°以上67°以下
0.995以上、1.025以下 STB折角58°以上67°以下
1.025を超える 探傷屈折角58°以上67°以下

試験体の曲率半径が小さい場合、探触子と試験体の接触面積が狭くなり適切な探傷が行えなくなるため、探触子の接触面を曲面加工する必要があります。

探触子の接触面の曲面加工

探傷面 試験体の曲率半径
50mm以上、250mm未満 250mm以上
外面からの探傷 ジグの使用または接触面の加工を行う ジグは非使用および接触面の加工を行わない
内面からの探傷 接触面の加工を行う 接触面の加工を行わない

探傷器の調整

STB-A1試験片またはA3系試験片を使用して、入射点の測定、測定範囲の調整、屈折角の測定を行います。
入射点、STB屈折角、測定範囲および探傷感度は、作業開始時だけでなく、作業開始後4時間以内毎と作業終了時に点検し、これら条件の変化量を確認する必要があります。

装置の調整項目 使用する試験片等
入射点の測定(0.5mm単位) STB-A1、STB-A3、STB-A31、STB-A32
測定範囲の調整
STB屈折角の測定(0.1°単位)
探傷屈折角の測定(0.1°単位) STB音速比、V透過法または、対比試験片による方法

※探触子に曲面加工を行っている場合の入射点・測定範囲・屈折角の測定および調整方法は、曲面加工を行っていない場合と異なります。
詳細はJIS Z 3060-2015の付属書Cを参照ください。

エコー高さ区分線の作成と領域区分

同じ大きさのきずでも、探触子からの距離(ビーム路程)が近いとエコーの高さは高くなり、遠くなると低くなります。探触子からきずまでの距離(ビーム路程)が異なっても、同じ大きさのきずを同じように評価する必要があり、このためにエコー高さ区分線を作成します。

RB-41A、RB-41B、RB-42またはRB-A6を使用し、6dBずつゲインを変えた3本のエコー高さ区分線を作成し、上からH線、M線、L線とします。
(L線は、きずエコーの評価に用いられるビーム路程の範囲で、その高さが10%以上ある必要があります。)
エコー高さの領域区分は、L線より下をI、L線とM線の間をⅡ、M線とH線の間を、HⅢ線より上をⅣとします。

エコー高さ区分線の作成と領域区分

試験片の適用範囲

調整項目 曲率半径
試験片の適用範囲
エコー高さ区分線の作成 試験片の適用範囲

探傷感度の調整

RB-41A、RB-41B、RB-42またはRB-A6を用い、調整します。

使用する試験片 探傷感度の調整方法
RB-42 標準穴のエコー高さがH線に一致するようにゲインを調整する
RB-A6 公称屈折角70°を使用する場合は、標準穴のエコー高さがH線に一致するようにゲインを調整する
公称屈折角65°を使用する場合は、標準穴のエコー高さがH線に一致するようにゲインを調整する
公称屈折角45°を使用する場合は、標準穴のエコー高さがH線に一致するようにゲインを調整した後、6dB上げる
RB-41A 標準穴のエコー高さがH線に一致するようにゲインを調整し、感度補正量の合計値が2dBを超える場合には、感度補正量を加える
RB-41B 標準穴のエコー高さがH線に一致するようにゲインを調整し、感度補正量の合計値が2dBを超える場合には、感度補正量を加える

試験片の適用範囲

調整項目 曲率半径
試験片の適用範囲
探傷感度の調整 試験片の適用範囲

探傷

きずの傾きによる見落としを防ぐため、2方向以上の超音波ビームで行います。

探傷面、探傷範囲および周波数

内外面の探傷 探傷面 探傷範囲 使用する最大のビーム路程 周波数
外面だけ探傷可能な場合 外面(凸面)両側 直射法および1回反射法の範囲 100mm以下 3.5~5MHz
100mmを超え 150mm以下 2~5MHz
150mmを超え 250mm以下 2~3.5MHz
250mmを超える場合 2MHz
内外面ともに探傷可能な場合 外面(凸面)両側 直射法および1回反射法の範囲 100mm以下 3.5~5MHz
100mmを超え 150mm以下 2~5MHz
150mmを超え 250mm以下 2~3.5MHz
250mmを超える場合 2MHz
両面両側 直射法の範囲 100mm以下 3.5~5MHz
100mmを超え 150mm以下 2~5MHz
150mmを超え 250mm以下 2~3.5MHz
250mmを超える場合 2MHz

検出レベルは、M線を超えるきずを対象とするM検出レベルと、L線を超えるきずを対象とするL検出レベルのいずれかを、当事者間の話し合いで決めます。
定められた範囲を探触子走査し、M検出レベルの場合は最大エコー高さがM線を超えるきずを、L検出レベルの場合は最大エコー高さがL線を超えるきずを評価対象とします。評価対象のきずエコーを検出したら、その時の探触子位置、ビーム路程、エコー高さの領域区分等を記録します。

次に、きずの指示長さを測定します。きずの指示長さとは、溶接線に平行な方向の長さです。きずの最大エコー高さを検出した位置から、左右走査(溶接線に平行に探触子を走査)を行い、エコー高さがL線を超える範囲がきず指示長さとなります。