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T継手溶接部の超音波探傷 Application Notes - Ultrasonic Flaw Detection

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T継手溶接部の超音波探傷

T継手溶接部の超音波探傷

溶接は、金属を溶かして接合部を一体化する方法の1つで、自動車、船舶、建設機械、建築物など、あらゆる金属構造物で使用されています。
溶接の品質は、溶接条件や溶接工の技量により大きく左右され、不適切な溶接は重大な事故につながる可能性もあります。このため、溶接部の品質確認は非常に重要で、超音波探傷器はこの品質確認のために広く使用されています。

ここでは、鋼のT継手溶接部の超音波探傷について説明します。

※詳細は、JIS Z 3060(鋼溶接部の超音波探傷試験方法)をご参照ください。

測定方法

平板突合せ継手溶接部の探傷では斜角探触子を使用しましたが、T継手溶接部の探傷では、斜角探触子に加えて垂直探触子も使用します。
JIS Z 3060では、垂直探触子の公称周波数および振動子の公称寸法を以下のように定めています。斜角探触子については、平板突合せ継手溶接部の探傷を参照ください。

探傷器の調整

斜角探傷では、STB-A1試験片またはA3系試験片を使用して、入射点の測定、測定範囲の調整、屈折角の測定を行います。
垂直探傷子では、STB-A1試験片等を用いて、測定範囲の調整を行います。
入射点、STB屈折角、測定範囲および探傷感度は、作業開始時だけでなく、作業開始後4時間以内毎と作業終了時に点検し、これら条件の変化量を確認する必要があります。

装置の調整項目 使用する試験片等
入射点の測定(0.5mm単位) STB-A1、STB-A3、STB-A31、STB-A32
測定範囲の調整
STB屈折角の測定(0.1°単位)
探傷屈折角の測定(0.1°単位) STB音速比、V透過法または、対比試験片による方法

エコー高さ区分線の作成と領域区分

同じ大きさのきずでも、探触子からの距離(ビーム路程)が近いとエコーの高さは高くなり、遠くなると低くなります。探触子からきずまでの距離(ビーム路程)が異なっても、同じ大きさのきずを同じように評価する必要があり、このためにエコー高さ区分線を作成します。

斜角探傷ではSTB-A2系試験片もしくはRB-41を、垂直探傷ではRB-41を使用して、6dBずつゲインを変えた3本のエコー高さ区分線を作成し、上からH線、M線、L線とします。
(L線は、きずエコーの評価に用いられるビーム路程の範囲で、その高さが10%以上ある必要があります。)
エコー高さの領域区分は、L線より下をI、L線とM線の間をⅡ、M線とH線の間をⅢ、H線より上をⅣとします。

エコー高さ区分線の作成と領域区分

装置の調整項目 探触子 使用する試験片
エコー高さ区分線の作成 斜角探触子 STB-A2、STB-A21、RB-41A、RB-41B
垂直探触子 RB-41A、RB-41B

探傷感度の調整

斜角探傷ではSTB-A2系試験片やRB-41を、垂直探傷ではRB-41を用い、標準穴のエコー高さがH線に一致するように探傷感度を調整します。

装置の調整項目 探触子 使用する試験片
探傷感度の調整 斜角探触子 STB-A2、STB-A21、STB-A3、STB-A31
STB-A32、RB-41A、RB-41B
垂直探触子 RB-41A、RB-41B

探傷

きずの傾きによる見落としを防ぐため、使用するビーム路程が250mm以下の場合は、超音波を溶接部に直接当てる直射法と、超音波を底面に当て反射した超音波で溶接部を狙う1回反射法を組み合わせて探傷します(片面片側)。

板厚が厚く、ビーム路程が250mmを超える場合は、表面側だけでなく底面側からも探傷します(両面片側)。

垂直探傷では、直交する外面に探触子を接触させ探傷します。

探傷面、探傷範囲および周波数

探触子 探傷面 探傷範囲 使用する最大のビーム路程 周波数
斜角探触子 片面片側 直射法および
1回反射法の範囲
100mm以下 3.5~5MHz
100mmを超え 150mm以下 2~5MHz
150mmを超え 250mm以下 2~3.5MHz
250mmを超える場合 2MHz
両面片側 直射法の範囲 100mm以下 3.5~5MHz
100mmを超え 150mm以下 2~5MHz
150mmを超え 250mm以下 2~3.5MHz
250mmを超える場合 2MHz
垂直探触子 片面
母材表面
探傷面~設計溶接
溶込み部
40mm以下 5MHz
40mmを超え 60mm以下 2または5MHz
60mmを超える場合 2MHz

検出レベルは、M線を超えるきずを対象とするM検出レベルと、L線を超えるきずを対象とするL検出レベルのいずれかを、当事者間の話し合いで決めます。
定められた範囲を探触子走査し、M検出レベルの場合は最大エコー高さがM線を超えるきずを、L検出レベルの場合は最大エコー高さがL線を超えるきずを評価対象とします。評価対象のきずエコーを検出したら、その時の探触子位置、ビーム路程、エコー高さの領域区分等を記録します。

次に、きずの指示長さを測定します。きずの指示長さとは、溶接線に平行な方向の長さです。きずの最大エコー高さを検出した位置から、左右走査(溶接線に平行に探触子を走査)を行い、エコー高さがL線を超える範囲がきず指示長さとなります。